澁澤龍彦『妖人奇人館』
何故だか分からないけれど、この人の本を読むと元気が出る。
ノストラダムスカリオストロラスプーチンとかフリッツ・ハールマンなどの「怪人」を
こんな風にカジュアルに書いているのがとてもよかった。
これら今ではあまりにもポピュラーな題材も当時はまだ新しく、
それを砕けた表現なのに味のある筆致で飽きさせない、という部分でなんとなく植草甚一を思い出した。




柴田元幸レベッカ・ブラウン『私たちがやったこと』
読みはじめの印象は「女の執着」とでも言うものをこれでもかと描き出してくるという、
僕にとってはうんざりするほど嫌なものだった。
しかし途中から幻想的な展開になだれ込むと、嫌なのにひき込まれてしまう。
面倒くさくなり半分よんでしばらく放置していたのだが、ふともう一度手にとって続きを読むとそのまま最後まで読み切れた。
読み終わった時にははじめの頃の苛立や嫌悪感は完全に消えて、ある種の清々しさのようなものさえ胸に芽生えていた。
「よき友」は必読。つまらない死に別れドラマのようなベタなネタのようで、そういったものとは最も遠い何かを残す作品。




ロバート・フルガム『人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』
最初はお行儀のいい「為になる」退屈な本かと思っていたが、とんでもなかった。
泣けたり笑えたり、もうどこかで気付いたり知ったりした事が実は書かれているのだが、それでも新鮮な感動がそこにあるのは、筆者の持つ複数、それもたくさんのカメラ・アイの言葉運びからだろうか。
作者はいい人、である以前に実はすさまじい何かを背負って、それを乗り越えようと流転して来た人なのかもしれない、そんな事がふとよぎる瞬間。